無題

一か八かでトライした大きな波をつかまえることができた。波の高いポジションにボードのヘリがしっかり食い込み、槍が空を飛ぶかのようにものすごいスピードで右に走る。ナイフのように鋭い水しぶきが上がる。気持ち良いを通り越して少し怖いが、ボードはしっかりと安定している。ボードは僕を乗せ、そのままのスピードでぐんぐん進み、海から飛び出して剥き出しの崖に衝突しそうになる。僕は瞬時に、柔らかい動きで崖壁を蹴り、砂浜に綺麗なポーズで着地する。何故かピカピカに磨いた革靴を履き、スーツにネクタイまで着用している。ボードはいつのまにか消えている。僕はこんなことはいつもやってるんだ、という感じにスーツについた砂をパンパンと払い、姿勢良く街に向かって歩き出す。あちこちからの視線を感じながらそれに気がつかないふりをして。

ドクター

ガードが空いた瞬間に放たれたストレートが綺麗に顔面にヒットした。当たった瞬間にKO間違いなしと思わせるような完璧なパンチだった。やられた方の選手が倒れながらリングに真っ赤な唾を吐いた。意識はなく、手もつかずにそのまま顔からリングに倒れこんだ。死んだかも知れないと咄嗟に思った。

ドクターは?ドクターはどこだ?

叫びながら医者を探した。医者どころかレフェリーもセコンドも誰もいない。公式戦ではなくただのスパーリング練習なのか。倒した方の選手はちょっときまりが悪そうにぼおっと突っ立っている。ちょっとやりすぎたかも知れないと頭の中で考えていることだろう。

この辺で目が覚めた。

へえ、こういう時に自分は「ドクター」という言葉を選択するんだな。と、目が覚めて一番に思った。「誰か」とか「医者」とかじゃなくて「ドクター」なんだ。

登場の両選手は実在する。倒した方はジムの会員のひとりで、私がジムに入会した頃は学生だったが卒業して医者になった。(本物のドクターだ。)スパーリング練習の相手をしてもらったこともある。倒された方は高校の時の同級生で、地味だけど運動神経が良くて心優しい好青年だった。部活動中にソフトボールが頭に当たって大きな手術を受けたことをおぼえている。その高校を退学になってから一度も会ってないし、連絡先どころか名前すらわからない。

あらゆる時空間を超えて私の頭の中で戦うとは二人とも夢にも思うまい。

トンネル

トンネルに入ったところで猛烈な睡魔が襲ってきた。高速道路での居眠り運転。大事故の恐怖心はもちろんあるが、眠気は強烈だ。とても目を開けていられない。

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行き交う車のエンジン音が壁の向こうの方から聞こえてくるような気がする。どうやら本道をそれているらしい。トンネルには非常時のために避難路が設けられていると聞く。もしそこに迷い込んだとすれば、他の車との接触事故は免れる。

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ブレーキを踏むか、せめてアクセルから足を離せば当面の問題は解決するのだが、夢の中の私にはそのアイデアがない。目を閉じたままハンドルを握り続けている。

すれ違い

旅行で訪れた街にたまたま父が来てると聞き
彼の宿泊先に電話をかけようとしたが
はて、どのホテルだったか思い出せない
あっちは僕がこの街に来てることは知らないだろうから
このまますれ違うことになってしまうのだろう
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夢の話だけどね
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今日は8月15日

ミスターマナーマン(未完成)

GAP、店舗前のスペースに自転車を止め、ベンチに座ってくつろいでいたら店員に呼び止められた。
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放置自転車禁止区域なのだそうだ。
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店内の売り場カウンターまで連れて行かれて説教が始まる。
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店員は全身よく日焼けした30才くらいの女性。がっちりとした体格で姿勢が良く、ケツのラインまで短くカットしたダメージデニムに洗いざらしのタンクトップ。ハーフに見えなくもないが、化粧のせいだろう。長い髪はブリーチのしすぎで傷んでいる。
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先月は放置自転車に対して160件くらいのクレームが入ったが、リニューアルをして今月は8件。その8人の中のひとりがあなたなのだ。と彼女は言う。実は8件のうちの2件は僕で、その数は7人がコレクトなのだけど、それは口にしない。
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自分は日頃から他人に迷惑をかけまいと思いながら生きているミスターマナーマンなのだ。電車の中ではリュックは前だし、ニンニクを食べた次の日は外出をしない。マナーの悪い輩は憎んでいるが、人を許す寛容さもある。先日はコンビニエンスストアで外国人旅行者に列に割り込まれたが、文化の違いだろうと進んで順番を譲った。
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それなのに禁止区域に自転車を放置するとは、自分でも自分のことが理解できないと店員に告げる。自分の行為を恥じているのはもちろんのことだが、何でこのようなことになったのかしっかり分析をして今後の人生のことを考えます。
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店員は半信半疑ではあるもののこれ以上僕を責めても何も出てこないと思ったのだろう。それに僕に対する興味も薄れてきたようで、頭の中では何か別のことを考え始めているようだった。解放されるのも間近であろう。
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ふと、駐輪場、あるいは駐輪スペースがあればいいんだけどな。せめて駐輪禁止とどこかに書いておいてもらえればこんなことにはならなかったんだけど。という考えが頭をよぎるが、そんなことはもちろん口にはしない。

無題(未完成)

不意打ちみたいに大きいのが来た。完全に脱力してプカプカやってたから態勢立て直すヒマもなく、ノーズを岸に向けるのがやっと。これは巻かれるなと思ったが、奇跡的に捕まえることができた。しかもノーパドル。猛スピードでレフトに流れ、更に加速して川に突入。頭の上を橋桁がかすめヒヤッとする。

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ボードを脇に抱え、屋上の非常口から建物に入る。階下は体育館のような広い部屋で、住人とおぼしき者たちが、毛布にくるまったり、小さなテントを張って、昼間だというのに、ほぼ全員が眠っている。モダンな学校のような作りだが、廃校したにしては新しすぎるし、何だかよくわけがわからない。

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四角い煙突のような非常口には階段はなく、コンクリの壁に打ち込まれたコの字型の鉄製パイプが梯子になって階下へと続いている。フロアまで10メートルほどはあろうか。寝ている住民を起こすまいと音をひそめて慎重に降りてゆくが、サーフボードからしずくが垂れている。ここに来るまでにだいたい乾いているはずだが、

王様

自分の中に王様がいる

何の実力もないのにプライドだけは高く

理解してないのに口だけは出す

人を見下し偉そうに振る舞い

肝心な時にはぐうぐう寝ているくせに

必要のない時に出てきてとんちんかんな行動を取る

 

僕が死ねば王様も死ぬ

僕が死なないのはなぜだろう